全日本ダートラが京都コスモスパークで開幕。雨の2本目もタイムアップが相次ぎ、バトルが白熱!

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 2024年の全日本ダートトライアル選手権は、3月24日に京都コスモスパークで開催されたFORTEC CUP in KYOTOで開幕を迎えた。今年は10月に広島テクニックステージタカタで行われる最終戦まで全8戦のシリーズが組まれているが、6月に第4戦として行われる予定だった石川県輪島市門前モータースポーツ公園の一戦が、1月の能登半島地震の発生を受け、中止されることが3月12日に発表された。長年にわたって全日本ダートラのシリーズを折り返す一戦として親しまれてきた伝統の大会が、復興の歩みとともに近い将来、また全日本の一戦として復活することを願いたい。
 
 今季の全7戦の特徴は、こちらも長い歴史を誇る関東栃木の丸和オートランド那須で2戦が開催されることだが、東北ラウンドも青森のサーキットパーク切谷内と福島のエビスサーキット新南コーススライドパークの2会場で行われる。第3戦が開催される北海道のオートスポーツランドスナガワを加えると、今年は7戦中5戦が東日本で行われるという、近年にない形になっているのも注目ポイントだ。

 京都コスモスパークの一戦は、ここ数年、開幕戦として行われることが定着しており、今年もそれに倣った形だ。ただ、公開練習が行われる土曜日から雨が降り、日曜の決勝も降っては止むという不安定な天候が続いた。通常、ダートラでは、こうした天気の場合は路面が悪化する一方となり、第1ヒートのタイムで勝敗が決するということも珍しくない。しかし、今回は事前にコース整備が徹底して行われたため、1本目の走行後も路面が荒れることが少なく、第2ヒートでは各クラスでタイムアップ合戦となり、逆転劇が相次いで大会を盛り上げた。参加選手達も皆、関係者のコース整備面での尽力を称えていた。

天候が安定しなかった決勝日。路面が荒れるはずのウェットコンディションでもタイムアップが続き、最後まで見応えのあるバトルが展開された。©BライWeb

 2WDのAT車が主力マシンとなっているPNE1クラスは、昨年、スイフトスポーツで全日本2連覇を決めた則信ノワールしげおが、今年はSC1クラスに移行したため、王者不在の戦いとなった。昨年、則信に僅差で敗れ、シリーズ2位となった葛西キャサリン伸彦が最もタイトルに近い男と見られているが、葛西は第1ヒートのスタート直後にコースオフ。第2ヒートは不出走になり、このクラスは波乱の幕開けとなった。

 この混乱の中、第1ヒートのトップを奪ったのは、今年からこのクラスに参戦する関東の小山健一のスイフトスポーツAT。昨年までは改造車のシビックで全日本でもアグレッシブな走りを見せてきた小山の、AT車への転向は、コスモスのパドックでも大きな反響を呼んだが、本人は「今回が実質的なシェイクダウン。クルマはまだ6割くらいの仕上がり」と至って冷静。しかしながら第2ヒートでもシードゼッケン勢を抑えてトップタイムをマークして、あっさりとPNE1クラスデビューウィンを飾ってみせた。

今年からスイフトスポーツのATモデルに乗り換えて話題を集める小山健一が、見事なクラスデビューウィンを飾った。©BライWeb

「様子見で基本、抑えて走ったけど、今日のような路面はそれくらい(の走り)で良かったみたい。あまりやり過ぎるとタイムが出ない、という情報も聞こえていたからね。それでも何か所かやり過ぎちゃったけど(笑)」と小山。フルでシリーズを追うかは現時点で未定とのことだが、絶対的な速さを誇る地元丸和の大会が2戦あるだけに、2度目のチャンピオンを狙ってくる可能性は高いと言えそうだ。次戦では復調を果たすであろう葛西とのバトルが、今年はこのクラスを賑やかなものにしてくれるだろう。

シビックマイスターとして、その熱い走りが注目されてきた小山。今後、スイフトでどんな走りを見せてくれるか、楽しみだ。©BライWeb
シードゼッケン勢最上位の2位を獲得した鈴木正人。2本目に大きくタイムアップしたが、小山のタイムには及ばなかった。©BライWeb

 続くPN1クラスも若きチャンピオン、徳山優斗がヤリスからGR86に乗り換えてPN3クラスへ移行。同じくヤリスを駆った川島秀樹もPN2クラスへ移ったことから、今回の開幕戦でチャンピオンマシンのヤリスをドライブするドライバーは僅か1台のみ、とその顔ぶれはちょっと昨年とは異なったものになっている。

 その中、第1ヒートでは学生時代からコスモスを走り込んでいる奈良勇希のスイフトスポーツがやはり速く、暫定ベストをマーク。そのまま首位で折り返すと思われたが、デミオを駆る太田智喜が0.8秒近くもそのタイムを更新して、奈良にプレッシャーをかける。奈良はそれでも第2ヒートでは、ただ一人、1分34台に叩き入れてベストタイムを大きく吊り上げるが、またも太田が最後に0.5秒、打っちゃって2本のヒートを完全制覇した。「昨年のこの大会は6位で終わったので、今年はここで勝っていい流れを作りたかった」と太田。太田が得意とする門前の一戦が今年はなくなったことを考えると、この1勝の価値はかなり大きなものとなるはずだ。

チャンプ不在のクラスとなったPN1は、太田智喜が両ヒートともトップタイムをマークして完全優勝。©BライWeb
3年ぶりの王座奪回を狙う太田が幸先の良い1勝を獲得した。©BライWeb
全日本期待の若手の一人である奈良。ホームコースでの勝利はならず、2位でゴール。©BライWeb

 その太田を上回るシリーズ2位で昨年を終えた青森の工藤清美は、今年、ATのフィットをチョイスし、敢えてこのクラスで戦うことを決断した。その工藤は第1ヒートでは太田に5秒の後れを取ったが、第2ヒートでは2秒差まで詰めて8位でその初戦を終えた。このビハインドをどこまで埋めることができるかが、このクラスの一つの焦点になるかもしれない。

FFマイスター、工藤清美も今年からAT車にスイッチ。MT車とのガチンコバトルに挑む。©BライWeb

 PN2クラスは昨年シリーズ2位の鶴岡義広がSC1クラスに移行したが、チャンピオンの中島孝恭をはじめ、シードゼッケンを持つ6名の内、5名が残留した。因みに16台が参加したこのクラスは全員が現行のZC33S型スイフトスポーツを選択している。第1ヒートでは中島が後続を1.5秒近くも引き離すタイムでぶっちぎり、貫録を見せたが、第2ヒートに入ると昨年の最終戦を制した九州の濱口雅昭が1分32秒099の好タイムでゴールし、シード勢の走りを待った。

 だが濱口のタイムはシードドライバー達にも脅かされることなく最終の中島のトライへ。しかしチャンピオンも0.5秒届かず、濱口に年を股いだ2連勝を許すことになった。「途中で大失敗したので今日は絶対、勝てないと思っていた。だから、優勝が決まった瞬間は思わずグッと来てしまった」と感涙にむせんだ濱口。「去年はあまり全日本には出られなかったけど、クルマはずっと煮詰めてきたので、また結果が出せて嬉しい。今年はこのクルマで3年目だし、狙ってもいいと思っている」とタイトル獲りに意欲を見せた。 

昨年はスポット参戦にとどまった九州の濱口。満を持して挑む今年の初戦を制した。©BライWeb
シード勢のタイム更新はならず、その瞬間、勝利の雄叫びを上げる濱口。©BライWeb
2位にもノンシードの若手、北海道の張間健太が食い込んだ。©BライWeb

 PN3クラスには16台がエントリーした。現行型のGR86/BRZが大半を占めるRWD車対象のクラスだ。土曜の公開練習では、昨年のPN1チャンピオンの徳山優斗がGR86でぶっちぎりのタイムを叩き出して、実戦初ドライブとは思えないスピードを見せつけた。

 だが決勝日に入るとシード勢が速さを見せ、ともに中部から参戦する浦上真、パッション崎山が1-2で折り返す。第2ヒートは、この2台がマークした1分34秒台をめぐる攻防となるが、ここで1本目は3位につけていた徳山が1分34秒226をマークしてトップを奪う。注目のシード勢も34秒台に乗せてくるが徳山のタイムを更新できないまま、最終ゼッケン、昨年のチャンピオン、竹本幸広がトライ。

 ライバル達がウェット用タイヤをチョイスする中、ドライ用タイヤを履いた竹本は、「タイヤがグリップする所はしっかり踏み切って、高速コーナーも攻められた。タイヤが合わない路面では必死にマシンをコントロールした」という走りで1分33秒台に叩き入れて、土壇場で逆転優勝を飾った。

チャンピオン竹本は、1本目の3位から見事な逆転優勝を達成。©BライWeb

「昨日の徳山君のタイムには驚いた。正直、負けるとは思わなかったので、かなり悔しかった」と苦笑しながら振り返った竹本は、「ただ昨日は僕と徳山君のタイヤがハマった路面だったので抜けたタイムになったけど、今日はタイヤ的にもイコールコンディションの路面になったので競り合いになったと思う。この週末でクラス全体がまたレベルアップしたことを実感できたので、今年も厳しい勝負になるでしょうね」と今シーズンを展望した。

チャンピオンの貫録を見せた竹本だが、今後も接戦が続くと見通しを語った。©BライWeb
先輩格の竹本を脅かすスピードを見せた徳山。このクラスの台風の目になることは間違いない。©BライWeb

 Nクラスは昨年のチャンピオン、北海道の北條倫史が今年は参戦を休止。ランサーを駆って6年連続でタイトルを守った北條が不在ということで、いよいよGRヤリス隆盛の時代到来かという声も聞かれ始めた中での開幕となった。第1ヒートのトップタイムをマークしたのは、そのGRヤリスを駆る三枝光博。元全日本チャンピオンの肩書を持つベテランが、まずは断トツの1分26秒台でゴールしてみせた。

 三枝は第2ヒートでも僅かにタイムアップして再び1分26秒台をマークするが、ランサーを駆る細木智矢が1分25秒台にタイムを叩き入れて逆転し、シード勢の走りを待つことに。しかしそのシード勢はGRヤリスの岸山信之が26秒台に入れるも、三枝のタイムにも届かず、3番手。ラストゼッケン、地元の矢本裕之ランサーも表彰台には絡めず、細木がクラスデビューウィンを飾ることになった。

細木はシード勢を最後まで抑え切って全日本Nクラスのデビューウィンを達成した。©BライWeb

 インテグラ、スイフトスポーツ等を乗り継ぎ、すでに全日本チャンピオンも数回、獲得している細木は、全日本ダートラを代表するドライバーの一人だが、今年から格段にパワー、スピードが上がるランサーに乗り換え、4WDに初挑戦する。「今まで乗っていたクルマに比べると車重があるので滑り出すと、どこ行くか分からない(笑)。まだ全然、自分の手の内に収まっていない。だから今日はともかく我慢の走りに徹した。ただこのコースとは相性がいいので、それが結果に繋がった部分もあったかもしれない」という細木は、“4WDデビューウィン”という偉業も、なかなか実感できないといった様子で振り返った。

4WDでの走りが待たれていた一人でもあるだけに、細木の今後の走りには引き続き、注目だ。©BライWeb

「GRヤリスは乗ったことがないから、そのポテンシャルは分からないけど、ランサーの強みを生かした走りができれば、まだ勝負はできるでしょう」と細木。硬軟どちらの路面でも速さを発揮できるのが細木の強みだが、持ち前の攻撃的な走りをドライ路面で見せることができれば、ライバル達にとっては、なかなか手強い一台となりそうだ。

どんなマシンでも、すぐに手なづけて速さを引き出してきた三枝。全日本の頂点を久々に狙う一年になりそうだ。©BライWeb

 SA1クラスは、最終戦までチャンピオンを争った細木智矢と佐藤卓也がともにクラスを移行したため、こちらも王者不在のバトルが展開されることとなった。第1ヒートは昨年の最終戦で強豪に交じって4位を獲得した中国地区期待の若手、北野壱歩のスイフトスポーツが、ただ一人、1分32秒台に乗せる好タイムで暫定トップに立つ。第2ヒートに入ると、ほとんどのドライバーがタイムアップを果たすも33秒の壁は破れない。北野もほんの僅かタイムアップするも、再び32秒台にとどまるタイムでゴールする。シード勢の出走になり、北野と同じ中国地区の川本圭祐のインテグラが32秒台に乗せてくるが、北野のタイムには届かず。しかし1本目は4位だった河石潤のスイフトスポーツが、ライバルの度肝を抜く1分32秒040でゴール。北野のタイムを0.6秒詰めて逆転に成功した。

FFマイスターの一人でもある河石が、若手が叩き出した好タイムを最後に塗り替えて優勝。©BライWeb

 最終ゼッケンの意地を見せた河石は、「1本目のタイムが良くなくて、直前に降ってきた雨のせいだろうと思っていたんだけど、インカーの動画を見返したら結構ミスしていた。そこを修正すれば行けるだろうと2本目はともかく自分の走りに集中した。スイフトにもだいぶ慣れてきたので、色んなコンディションに対応できるようになったことも今日の優勝に繋がったかもしれない」と土壇場で掴んだ勝利を振り返った。

 今年は地元関東の丸和オートランド那須での大会が2戦あるため、チャンピオン候補本命と目されているが、「昔から丸和はスポットで出てくる地元のスペシャリストが優勝をさらってきたコースだから、そう簡単には勝てないでしょう」と笑った。ミラージュでチャンピオン返り咲きを狙う同じ関東の古沢和夫をはじめ、テクニシャンが揃うこのクラスだが、地元の“一発屋”がタイトルレースを掻き回す走りを見せることも十分にあり得る、と言っていいだろう。

今季はラストゼッケンが定位置になりそうな河石。生きのいい若手の走りを迎え撃つ立場になる。©BライWeb
今回の一戦で全国にその名を轟かせた北野。ホームコース、テクニックステージタカタで磨いた速さが試される一年になりそうだ。©BライWeb

 SA2クラスは昨年、初のチャンピオンに輝いた浜孝佳をはじめとする有力ドライバーが全員、このクラスに残った。一番の話題は全日本ダートラを代表するスタードライバーである北村和浩がランサーからGRヤリスにマシンを変えたこと。全日本ダートラではまだトップの地位を築いたとは言い難いこの最新マシンを、いかに名手、北村が手なずけられるかが、このクラスはもちろん、今年の全日本ダートラの注目点となることは間違いないだろう。

遂にGRヤリスにマシンチェンジした北村。その走りは開幕戦から高い注目を集めた。©BライWeb

 参加台数も20台と、今大会最多を数えたこの人気クラスの暫定トップを奪ったのは、ランサーを駆ってスポット参戦した地元の藤本隆。GRヤリスは3年目のドライブとなるシード勢の一角、黒木陽介が2番手につけたが、その差は1秒。藤本の群を抜く速さが光った1本目となる。
 
 しかし第2ヒートでさらなるタイムアップを狙った藤本は、まさかのタイヤバーストでリタイヤとなってしまう。それでも藤本のタイムは破られることなく競技は進み、猛者が揃うシード勢の出走に。注目の北村は1.4秒詰めるもGRヤリスでのデビューウィンは果たせず。そして黒木も、藤本と同じ1分25秒台に乗せてくるも逆転には至らず。結果、藤本が今大会では唯一、1本目のタイムで逃げ切ったドライバーとなった。

藤本は1本目の走りで勝ち取ったベストタイムを最後まで守り切った。©BライWeb

 念願の全日本初優勝を達成した藤本は、「1本目は、地元の利を生かしてうまく走れた。ただ、昼休みに降った雨にも助けられたと思う」とコメント。このクラスも各ドライバーが順調にタイムアップしたが、2本目の前の雨がなければ、その幅がさらに広がっただろう、という読みが藤本にはあったようだ。

コスモスを知り尽くす男が、念願の全日本初優勝を達成。©BライWeb

 それでも今回は藤本以外のトップ6はいずれもシード勢が占めた。GRヤリスは黒木が2位、北村が4位に食い込んだ。今季もシード勢によるチャンピオン争いが続く可能性が高いが、今回の藤本のように、大金星を狙う各地区のスペシャリストの一発の速さにも注目していきたいところだ。

GRヤリスでの初タイトルを狙う黒木は2位で初戦を終えた。©BライWeb

 SC1クラスもシード勢6人全員が今年も開幕戦に元気な姿を見せた。そして昨年のシリーズトップ3がいきなり超接近戦を展開した。第1ヒートのトップは昨年のシリーズ2位、関東の深田賢一が奪うが、0.009秒差で同3位の山下貴史が追い、昨年のチャンピオン山崎迅人が山下から0.082秒差の3位につけるという激しい三つ巴を見せる。しかし注目の2本目は、山下が1.1秒、深田の暫定ベストを更新するが、深田はまさかのタイムダウン。そして山崎はマシントラブルでリタイヤと、第1ヒートとは対照的な展開に。荒れた第2ヒートを制した山下が、まずは初戦を制した。

長くFTOに乗り続ける山下が第2ヒートでベストを塗り替えて優勝をさらった。©BライWeb
昨年は全日本初優勝も飾った深田。タイムダウンに終わるが、2位を確保した。©BライWeb

 全日本ダートラではすっかりお馴染みのとなっている三菱FTOに2年ぶりに勝利をもたらした山下は、「やっと勝てた。昨年からマシンがちょっと良くなったんだけど、ようやく結果に繋がった。ものすごく大好きなこのコースで優勝できて嬉しい」と満面の笑みで振り返った。昨年は山崎の独り勝ちの印象が強かったこのクラスは、今回の三つ巴のような接戦に持ち込めればライバルにも勝機はあるはず。今回の第1ヒートのような大混戦をこれからも期待していきたい。

旧車でもタイトルを狙えるのが改造車クラスのセールスポイント。山下も念願の初タイトルを狙う一年になる。©BライWeb

 SC2クラスは、昨年、初の全日本チャンピオンを獲得した上村智也が残留。V2を達成するためにも、地元で開催される開幕戦は是非とも獲りたいところだ。第1ヒートの首位を奪ったのは、上村と同じ近畿のシードゼッケン、吉村修ランサー。久々の全日本復帰戦となった広島の梶岡悟のランサーとともに1分26秒台に乗せてくるが、他のシード勢も次々と27秒台につけて逆転のチャンスを伺った。もちろん上村もその一人だ。
 
 注目の第2ヒート。シード勢の出走を前にトップに立っていたのは目黒亮。乾き出した路面を味方につけて吉村のタイムを1.5秒上回って1分24秒台に目標タイムを吊り上げる。目黒は一昨年のこのクラスのチャンピオン。いち早くGRヤリスを投入した昨年はマシンの習熟に手間取り、表彰台は僅か1回に留まったため、今季は屈辱のシード落ちを呑まされた。
 
 そのシード勢は吉村そして亀田幸弘のインプレッサが1分25秒台に乗せてくるも、目黒には遠く及ばず。ラス前の坂田一也が25秒を切ってくるが、目黒には0.5秒届かない。そしてラストゼッケンの上村は大きくタイムロスして、ポイント圏外の11位まで順位を下げる不本意な結果で開幕戦を終えることとなった。

目黒のGRヤリスは、第1ヒートの8位から一気に逆転優勝を決めた。©BライWeb

 1年半ぶりの勝利で復活の狼煙を上げた目黒は、「CUSCOさんにエンジンを新しくしてもらってトルクが上がったので、乗りやすくなったのが一番の勝因。1本目はクルマの動きに違和感があったので2本目にセッティングを変えたら動きが良くなって、滅茶苦茶、全開率の高い走りができたのも大きかった。エンジンのセッティングもまだ途中なので、煮詰めれば、もっと速くなるはず」とタイトル奪回に向けて、しっかりと手応えを掴んだ様子だ。

目黒は戦闘力の増したGRヤリスで2年ぶりの王座返り咲きを目指す。©BライWeb

 昨年は5人ものウィナーが誕生したこのクラス。しかしシリーズ序盤に連勝を決めた上村が、そのマージンを最後まで守り切ってタイトルを手にした。目黒が昨年の上村同様、一気にスタートで飛び出して王座を奪回するのか。それともライバル達が乱戦に持ち込むのか。次戦以降の戦いに注目だ。

昨年はシリーズ2位に終わった坂田一也も、今年はタイトルを狙う年になりそうだ。©BライWeb

 大会のトリを務める最速のクラスであるDクラスも昨年は5名のウィナーが生まれ、混戦の年となった。その中、チャンピオンを手にしたのは終盤の2戦を制した田口勝彦。しかしその田口も開幕戦での優勝で得た20ポイントが最後に大きく効いた形だ。
 
第1ヒートで圧巻のスピードを見せたのは、昨年、シリーズ中盤から欠場を余儀なくされ、約10か月ぶりの全日本復帰となった鎌田卓麻。1本目からただ一人、1分24秒台に叩き入れて、ライバルを大きく引き離す。注目の第2ヒートでも、好調鎌田は1分23秒台をマーク。シード勢にもこのタイムは壁が高かったか、誰も更新できないまま、ラスト2台のトライを迎える。

 だが、“ただでは終わらない”のが、やはりこのクラスの凄さ。まず炭山裕矢が0.2秒、鎌田を凌いでトップに立つ。すると第1ヒートは4位に沈んでいたラストゼッケンの田口が、炭山のタイムをさらに0.2秒更新してゴール。劇的なエンディングで、田口がチャンピオンの貫録を早々に見せつける形となった。

土壇場で逆転を決めた田口。昨年に続いて開幕戦を制した。©BライWeb
1本目の4位から盛り返した田口が、最後の最後でチャンピオンの底力を見せつけた。©BライWeb
ベストを更新し、勝負あったかと思われた炭山だったが、田口に逆転を許し、2位。©BライWeb
復活を告げる勝利の可能性も十分と思われたが、鎌田は結果的に3位に甘んじた。©BライWeb

「久々のヘビィウェットだったので、今日の1本目まではセッティングが合わせ切れなかった。2本目にセットを大幅に変更したら、それが当たってくれた。幸先の良いスタートが切れて良かった」と田口。最後のトライでセッティングを大きく変えるのは覚悟がいる作業だが、鎌田が見せつけたスピードが田口をそこまで追い込んだのかもしれない。予断というものがまったく当てにならない世界であることを改めて証明したこのDクラス。トリを飾るにふさわしい、スーパーマシンによるスーパーバトルが、今年も見られそうだ。

スリリングなバトルが展開されたDクラス。オーバーオールウィンを巡る戦いは、今年もヒートアップ必至だ。©BライWeb

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