プレイバック2023全日本ラリー/最終戦MCSCは、熾烈なバトルを制した内藤学武スイフトが全日本初戴冠!

 全8戦で争われる2023年のJAF全日本ラリー選手権は、ここ数年の例に倣い、岐阜の地で最終戦を迎え、「第50回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2023 supported by KYB」が開催された。全6クラスの内、すでに5クラスでドライバーズチャンピオンが決定。残すはJN4クラスのみとなった。

 2023年の全日本ラリーは開幕から第5戦までがターマック(舗装)で、北海道に舞台を移す第6戦、第7戦がグラベル(未舗装)、そしてこの最終戦が再びターマックというシリーズ構成。シリーズ中盤までにJN4クラスの主導権を握ったのは全日本ラリー3連覇を狙う西川真太郎/本橋貴司組のスイフトスポーツで、ターマック5戦で3勝と王者の風格を見せた。
 
 しかしグラベルの第6戦ARKラリーカムイでは西川はリタイヤに終わってノーポイント。続く第7戦RALLY HOKKAIDOも4位に終わり、グラベル2戦では15ポイントの上乗せにとどまるという、不本意な結果となってしまう。一方、このグラベル2戦で、2位、優勝と53ポイントを荒稼ぎしたのが、第2戦で優勝を飾った同じくスイフトスポーツを駆る内藤学武/大高徹也組だった。
 
 この結果、2台は西川が17ポイント、リードする形で最終戦を迎えた。一見すると西川のリードは手堅いように見えるが、有効6戦というポイントシステムを考えると、まだ5戦しか参戦していない内藤はポイントがすべて加算されるのに対し、西川はRALLY HOKKAIDOで稼いだ15ポイントを上回るポイントを得ないと有効得点を上乗せできないため、見た目ほどは離れてはいない。
 
 ただ西川はこのハイランドマスターズはスイフトスポーツで2021、2022年と2連勝中。対する内藤は2018年にデミオでこのラリーを制しているが、ハイランドマスターズは、それ以来の出場で、スイフトスポーツでこのラリーに臨むのは今回が初めてだった。

西川は2021年にスイフトで全日本初チャンピオンに輝いた後、翌年もターマックで4勝を飾ってV2を達成した。ターマックでは圧倒的な速さを見せるが、グラベルではまだ未勝利だ。©BライWeb
内藤はスイフトスポーツで2020年にシリーズ2位、翌年はヤリスCVTで同4位を獲得と好成績を残してきた。ターマックを中心に活動していたが、2023年はグラベルでも速さを発揮し、RALLY HOKKAIDOを初めて制した。©BライWeb

 今回のラリーはLEG1、LEG2とも3本のSSを、2回ループして走る計12SSが設定された。土曜のLEG1は牛牧6.20km、あたがす9.54 km、アルコピア-無数河6.08 kmの3ステージが待ち受けたが、牛牧のSS1は西川が0.4秒、内藤をかわしてベストタイムを奪い、好発進。しかしSS2あたがすは、内藤が6.6秒も西川をちぎって首位に立った。
 
 内藤は2本目のあたがすとなるSS5でも5.6秒、西川を突き離して首位をキープ。8.9秒のリードを築いてサーピスに戻ってきた。西川は、牛牧の2本は譲らなかったが、あたがすでの遅れが響いた形だ。

LEG1は、あたがすステージで西川に大きくリードした内藤がトップに立ってラリーを折り返した。©BライWeb

 明けた日曜、最終日のLEG2。この日はハイランドマスターズ伝統のステージとして知られる駄吉下り6.24km、大山線5.11km、前日から逆走となる無数河- アルコピア6.08 kmの3本を2ループするという設定だ。天気予報通り、この日は朝から雨が降り続き、ドライだった前日から、路面コンディションが一変した。
 
 この日、雨を味方につけて、まさに水を得た魚の如く最初に快走を見せたのは西川だった。最初のステージ、SS7駄吉下りで、JN2クラスのGRヤリス勢をも凌ぐ、総合でも5番手につけるスーパーベストをマークする。「タイヤ選択が当たったことも大きかったが、自分でも驚いたタイムだった」という西川は、ここで内藤を一気に0.2秒かわしてトップに立つ。

雨となったLEG2最初のステージ、駄吉下りで、西川は驚異的な速さを見せて一気に内藤を抜き去り、トップに立った。©BライWeb

 西川は続くSS8大山線でも内藤に1.8秒競り勝ち、その差を2.0秒に広げる。しかしSS9無数河- アルコピアでは、内藤が3.0秒勝って再逆転。1.0秒のリードで勝敗が決するLEG2の最終セクションに臨むことになった。

「前日、牛牧の下りで西川選手に負けたので、似ている駄吉下りが今日はキーポイントだなと思っていた。最悪、駄吉下りは負けてもいいから、前日の貯金で逃げ切れればと思っていたところで、いきなりやられてしまったので参った。勝てると思っていた次の大山線でも負けたので、かなり絶望感を持ってサービスに帰ってきた」と内藤。

「ただSS9の無数河- アルコピアを獲れたことで、自分の本来のペースを思い出せた感じがあった。路面が濡れていても、ここまでクルマを振って大丈夫なんだ、と分かったので、その走りをSS10の駄吉下りに持って行った」という内藤は、ここで西川を0.1秒ながら抑えるベストをマーク。首位を守った。

 続くSS11大山線に入る頃には路面も乾き出して、内藤が再び西川を0.5秒かわして、その差を1.5秒に広げる。しかし西川はあきらめてはいなかった。「大山線の最後1kmくらいで、雨が土砂降りになってきたので、そこはタイヤ的には内藤選手の方が大変だったと思う。自分のタイヤにとっては再び本領が発揮できる路面になってきたので、最後の無数河- アルコピアで逆転することはできると思った」

 しかし、その勝負の最終SS12をスタートした西川のスイフトは、スタート直後からマシンが不調を来たして痛恨のスローダウン。クラス6番手でのゴールとなり、逆転は果たせず、内藤の逃げ切りを許すことになった。

 ディフェンディングチャンピオンらしい別格の速さを垣間見せたものの、3連覇を逸した西川は、「自分の管理だけじゃなく、クルマの管理も最後までしっかりやらないといけないんだ、と改めて痛感させられた。ラリーは、やっぱり奥が深い。それを思い知った一戦でした」と無念の表情で振り返った。

 シリーズ後半戦で怒涛の追い上げを見せて遂に初の全日本王座をものにした内藤は、「自分の中では一番難しいグラベルラリーのRALLY HOKKAIDOを凄いタイムで勝てて、自信がつけて臨んだラリーだったけれど、その優勝は忘れて、リセットして今回は走るつもりだった」とラリー前の心境を明かした。

「ただやっぱりラリーが始まってみると、チャンピオンを狙うというのもあったし、どこまでやれるんだろう、と自分で自分に期待するような所もあって、一時は平常心を失くしかけたこともあったので、最後まで大変なラリーでした。チャンピオン獲得は、ちょっと時間がかかったなという気もするけど(笑)、真剣にラリーを辞めることを考えた時期もあったので、目標が叶えられて良かった」と振り返った。

内藤とともにコ・ドライバーを務めた大高徹也も全日本初チャンピオンを獲得。関東のラリーを中心に、様々なドライバーのコ・ドライバーを務めてきたベテランだ。©BライWeb

 チャンピオン決戦にふさわしい白熱のバトルを見せてくれたこのクラス。来たるシーズンは、またどのような激しい攻防が展開されるのか。全日本ラリーの明日を担っていくであろうドライバー達の走りが、今から楽しみだ。

JN1クラスはすでにチャンピオンを決めているヘイキ・コバライネン/北川紗衣組と勝田範彦/木村裕介組が、JN4クラスに劣らない激しいバトルを展開。SS9で勝田組が遂に首位に立つが、コバライネン組が再逆転し、最終的に8.6秒差で逃げ切った。©BライWeb
セレモニアルフィニッシュでお互いの健闘を称えあうコバライネンと勝田。©BライWeb
ヘイキ・コバライネン/北川紗衣組は2023年も、舗装ラウンドは5戦全勝と速さを見せてシュコダ・ファビアでは2年連続となるチャンピオンを獲得。©BライWeb
JN2クラスでも、すでにチャンピオン決定済みの奴田原文雄/東駿吾組が、LEG1で築いた大差のリードを守り切ってシーズン6勝目を獲得。©BライWeb
JN2クラスはGRヤリスが表彰台を独占した。©BライWeb
JN3クラスは、長﨑雅志/大矢啓太組がLEG1、LEG2ともトップタイムで上がって、フルポイントの23点をマーク。©BライWeb
最終戦でシーズン初優勝を飾ったJN3クラス長﨑雅志/大矢啓太組。©BライWeb
JN5クラスもヤリスを駆るトップ2台が熾烈なバトルを見せたが、大倉聡/豊田耕司組がLEG2後半でライバルの松倉拓郎/山田真記子組を振り切って優勝した。©BライWeb
JN5クラス優勝の大倉聡/豊田耕司組。ドライバーの大倉はチャンピオンを逸したが、豊田はコ・ドライバーチャンピオンを獲得。©BライWeb
JN6クラスはLEG1の6本のSSをすべて制覇した天野智之/井上裕紀子組アクアGR SPORTが優勝。シリーズ全勝を果たし、チャンピオンに花を添えた。©BライWeb

フォト&レポート/BライWeb