2024年のダートラ地区戦が続々とシリーズイン。中国地区&九州地区はともに広島のテクニックステージタカタで開幕!

©BライWeb

2024年JAF中国ダートトライアル選手権第1戦
CCN/HMCダートトライアル2024

 今年のJAF中国ダートトライアル選手権は、9月22日の最終戦まで全7戦のシリーズが組まれている。この内、5戦が今回の開幕戦が行われた広島のテクニックステージタカタで、2戦が山口の楠ハイランドパークで行われる。タカタでの5戦はJMRC中国ダートトライアルチャンピオンシリーズのタイトルがJAF地区戦とダブルタイトルでかかる形となっている。
 
 今年の地区戦は8クラスに分かれて選手権を競うが、チャンピオンシリーズでは入門者&初心者対象のチャレンジクラスが設定される。また地区戦の選手権対象外とはなるが、ライセンス不要のクローズドクラスと、ライセンス所持者対象のオープンクラスが全7戦で設定される。
 
 今年の開幕戦にエントリーしたのは72台。昨年の開幕戦とほぼ同じ台数だが、改造車の2WD車が集う中国地区戦では名物クラスのひとつ、SCD1クラスが台数増となったほか、昨年の開幕戦では台数不足により、不成立だったRWDクラスも今季は4台がエントリーした。

開幕戦は例年同様、全日本も開催される高速グラベルサーキットのテクニックステージタカタが舞台となった。©BライWeb

 JMRC中国ダートトライアル部会長を務めるのは、全日本のトップドライバーとして活躍中の太田智喜選手。「参加台数は横並びですが、昨年、チャレンジクラスに参戦した若い選手が、順調に選手権のクラスにステップアップしてくれたのは嬉しい限りです。学生の時から大会に出て、そこで知り合った大人の先輩達とも繋がりができるので、社会人になっても、また参加し続けたいという雰囲気ができてるんだと思います」と、太田部会長は若い力に期待を込める。
 
 その一方で、今回はかつて中国地区を代表するドライバーとして全日本でも活躍した、ベテランドライバー達も復活して元気な走りを見せるなど幅広い世代が集った大会となった。会場では、次期マシンの製作準備のため、“休眠中”の複数のドライバーも近々、復帰予定という声も聞かれ、昨年以上の盛り上がりを期待させる開幕戦となった。

開幕戦には往年の名ドライバーが復帰を果たした。1980年代の全日本ラリー選手権で3度のチャンピオンに輝き、その後は海外のラリーにも積極的に参戦するなど活躍を続けた大ベテラン、田口盛一郎が開幕戦に参戦。昨年、全日本ダートトライアル選手権チャンピオンを獲得したKATSUこと田口勝彦の父親としても知られる田口は、75歳という年齢を感じさせない、持ち前のアグレッシブな走りで第1ヒートではクラス5位に入り、会場をどよめかせた。ランエボマイスターとして知られる田口だが、今年はFFのデミオを駆る。©BライWeb
伊豆田浩三は兄の雅章とともに1990~2000年代の全日本ダートトライアル選手権に参戦。広島福山の名チューナーとして知られる小山自動車が手掛けた改造車のK-CARで、スズキ、ダイハツのワークスマシンと渡り合い、伊豆田兄弟の名を全国に轟かせた。「10年以上、休んでましたが、去年の最終戦に試しに出てみたら、“まだ走れる!”と思ったので(笑)、今年も時間の許す限りは出るつもりです。このクルマは地区戦に出ていた人から譲ってもらったクルマですが、改めて自分は全日本ではいいクルマに乗っていたんだなと感じました。当時のパーツはまだ持っているので、今後は移植して楽しむかもしれません(笑)」©BライWeb

 ATクラスは昨年、第4戦から4連勝して一気にチャンピオンを決めた行友優太のデミオが今回も絶好調。後続に付け入る隙を与えない走りで両ヒートともダントツのタイムを叩き出して優勝した。

ATクラスは行友優太が快勝し、タイトル防衛に向けて好発進。©BライWeb
ATクラス表彰。(左から) 2位豊島優凜、1位行友優太、3位北村一貴。©BライWeb

 PN1+クラスは、昨年、チャンピオンを獲得した南優希スイフトに唯一土をつけた藤原祐一郎のフィットが、第1ヒートで南に0.27秒競り勝ってトップで折り返す。しかし第2ヒートでは、南が自らのタイムを7秒以上も縮める2分4秒25というスーパータイムをマーク。藤原もタイムアップに成功するが、2分8秒台にとどまり、トップ奪回はならず。中国地区期待の若手が連覇に向けて最高のスタートを切った。

PN1+クラスは全日本でもその速さが注目を集めつつある南優希が、逆転で開幕戦を制した。©BライWeb
PN1+クラス表彰。(左から) 4位岩田直也、2位山谷隆義、1位南優希、3位藤原祐一郎、5位井上翔太郎、6位宗正勝吉。©BライWeb

 PNSAクラスは、ラリーではランサーに乗っている西隆司がデミオで第1ヒートのベストを奪う。しかし第2ヒートではインテグラを駆る岩坂有洋が2分10秒68まで暫定ベストを更新。再逆転を狙った西だったが、0.01秒届かず。2023年はJMRC中国チャンピオンリシーズのNクラスを制した岩坂が貫録を見せた形となった。

岩坂有洋が0.01秒差という大接戦を制してNPSAクラス優勝を果たした。©BライWeb
NPSAクラス表彰。(左から) 4位谷口成治郎、2位西隆司、1位岩坂有洋、3位小野守、5位ハンター大谷ヒロシ。©BライWeb

 SA1クラスは、昨年のシリーズを4位で終えた中畑有貴のインテグラが第1ヒート、2分7秒台のぶっちぎりのタイムで暫定トップに立った。第2ヒートは2分4秒台の攻防となったが、中畑が丸本淳二のコルトを0.59秒凌いでトップチェッカー。中畑が嬉しい地区戦初優勝を飾った。

両ヒートともベストを譲らなかった中畑有貴が、SA1クラスの開幕戦を制した。©BライWeb
SA1クラス表彰。(左から) 4位松岡修司、2位丸本淳二、1位中畑有貴、3位坂本幸洋、5位坂本達哉、6位坂上直博。©BライWeb

 RWDクラスは昨年、最終戦でシーズン初優勝を飾り、劇的な逆転でチャンピオンを決めた畑窪琢巳の86が第1ヒートで暫定ベストを奪取。そのタイムは第2ヒートで一旦は丸本光のBRZに交わされるも、畑窪は2分6秒台までタイムを詰めて再逆転。ラストゼッケンの意地を見せた。

RWDクラスは畑窪琢巳が2本目でも大きくタイムアップして、ライバルを寄せ付けなかった。©BライWeb
RWDクラス表彰。(左から) 2位丸本光、1位畑窪琢巳、3位大竹公二。©BライWeb

 ランサー、インプレッサ勢が主流のNS1クラスは、中部の全日本ドライバー、河田富美男がGRヤリスでスポット参戦し、話題を集めた。しかしバトルの主導権を握ったのは、やはりタカタ・スペシャリスト達。昨年も最終戦までしのぎを削り合ったチャンピオン川戸惟寛とシリーズ2位の西田ツカサが、第1ヒートからともに1分57秒台で競り合って緊迫したバトルを見せる。
 
 第2ヒートではラス前の西田が1分56秒台にタイムを乗せ、川戸のタイムを塗り替えるが、最終走者の川戸はこの日、総合でも3番手に入る1分53秒99をマーク。このタイムは、昨年、全日本チャンピオンを獲得したため、今季はOPENクラスからエントリーとなった地元の浜孝佳と同じ53秒台をマークしただけに、「タイム的にも満足できる走りでした」と川戸は連覇に向けて、幸先の良いスタートを切った。

川戸惟寛が2023チャンピオンの貫録を見せるスーパーベストを叩き出して、NS1クラスで完勝。©BライWeb
NS1クラス表彰。(左から) 4位片岡学、2位西田ツカサ、1位川戸惟寛、3位清岡毅。©BライWeb

 2WDの改造マシンを操る猛者達が毎回激しいバトルを展開するSCD1クラスは、ともにシビックを駆る重松良輔、一柳豊による僅差のバトルとなったが、第2ヒートで0.29秒差で一柳を振り切った重松が優勝。最大のライバルでもあるチームメイトとの接戦を制して、こちらも連覇に向けて好スタートを切った。

2WD最速の走りを見せてタイトル防衛に向けて好スタートを切ったSCD1クラス重松良輔。©BライWeb
SCD1クラス表彰。(左から) 4位鈴鹿浩昭、2位一柳豊、1位重松良輔、3位坂井秀年。©BライWeb

 SCD2クラスは昨年の最終戦で復活した古屋慶己ランサーが第1ヒートでただ一人、1分57秒台に乗せてベストタイムを奪取。第2ヒートに入ると、古屋はさらに自らの暫定ベストを1.45秒更新してトップを守る。古屋のチームメイトでもある上田強が最後に同じ1分56秒台にタイムアップするが、僅かに0.2秒届かず。中国地区のトップドライバーとして知られた古屋が復帰後、嬉しい初勝利を飾った。

SCD2クラスは0.2秒差でライバルを振り切った古屋慶己が優勝。©BライWeb
SCD2クラス表彰。(左から) 4位アキマただゆき、2位上田強、1位古屋慶己、3位今川正樹、5位塚本哲彦、6位西元直行。©BライWeb
OPENクラスは2週間後の全日本開幕戦を控えて肩慣らしの走行となった、レジェンドドライバー梶岡悟がトップタイムをマークした。©BライWeb

2024年JAF九州ダートトライアル選手権第1戦
CRMCダートトライアル2024

 今年のJAF九州ダートトライアル選手権は8月に開催される最終戦まで、全5戦のシリーズが組まれている。九州地区は、それまで九州唯一のダートトライアルコースとして知られた福岡県のスピードパーク恋の浦が2022年を以て閉鎖となったため、昨年は九州のダートラ界にとっては激動の一年となった。

 シリーズ存続のため、昨年の九州地区戦については、広島のテクニックステージタカタで中国地区戦と同日に開催されることが決定し、中止を余儀なくされたイベントもあったものの、4戦が行われ、選手権も7つのクラスで無事、シリーズが成立した。

 今年の九州地区戦についても、昨年同様、中国地区戦と同日開催の形で4戦が開催されるが、8月11日の最終戦については、同じテクニックステージタカタでJAF四国ダートトライアル選手権と同日開催となる。四国地区戦は香川スポーツランドが主戦場となるシリーズだが、数年前まで最終戦のみタカタで開催しており、今年は九州地区戦と同時開催という形で復活する形になる。

 九州地区戦のクラス分けはATクラスが2WD/4WDで2クラスに分かれるほか、伝統的にランサーエボリューション、インプレッサWRXといった2リッター4WDターボ勢のドライバーが多いことから、これらのハイパワー4WDクラスについては、S2、C、Dと改造度によって3クラスに分かれるのが特徴で、毎回、白熱したバトルが展開されている。

 また中国地区同様、選手権対象外としてライセンス不要のクローズドクラスが設定され、OPENクラスは2WD/4WDでふたつのクラスが設定されている。さらに九州地区戦とダブルタイトルとなるJMRC九州ダートトライアルチャンピオンシリーズではレディースクラスが設定されている。

 自身も九州地区のトップドライバーとして現役で活躍中のJMRC九州ダートトライアル部会長の橋本和信選手は、「まずは併催してもらえるだけでも有り難いことなので中国地区の方々には感謝しています。本当は、もう自分も含めて引退しないといけない大ベテランのメンバーが多いんだけど(笑)、九州地区のダートラの灯を消さないためにも、もう少し頑張っていきたい。GRヤリスも注目のATモデルが出たし、ランエボにもATモデルがあるので、4WDのATクラスの盛り上がりを今後は期待したいですね」と、ハイパワー4WDが盛況の九州地区の今後を展望してくれた。
 
 なお九州地区では、初中級者対象のJMRC九州ダートトライアルジュニアシリーズも、昨年から山口の楠ハイランドパークに舞台を移し開催されており、今年も全4戦が行われる予定だ。九州地区や西中国地区の入門ドライバーには特にオススメのシリーズだ。

AT1クラスには、福岡の良本海(写真左)と松田耕平(同右)がレンタル車のフィットでダブルエントリー。ともに競技では初というATドライビングを楽しんだ。普段は86で地区戦に参戦している良本は、「(86に比べれば)やはりパワーはないし、加速も劣るけど、走りは思っていたよりは悪くなかった。ATでのダートラもありだな、と思いました」。4年ぶりに復活の一戦でAT車を駆った松田は、「タカタも初走行ということもあって、今日はまだAT車を信じ切って運転することはできなかったけど、慣れたら楽だろうなとは思いました。ダートラに慣れるという意味でもAT車で入門するのはいいと思う。今年一年はこのクルマに乗りたいと思います」©BライWeb
クローズドクラスには、九州大学自動車部の若手が昨年から参戦を続けている。全日本ダートラでも頭角を現している大学院生の岡本泰成(左から2番目)は、「昨年は自動車部のOBの方々に援助して頂いたお陰でここまで遠征することができました。恋の浦を走ったことのない新人も入ってきていますが、恋の浦が走れなくなったから(ダートラを)辞めたという部員はいません。学生の大会もあるので、今後も何とか走る機会を絶やさないで行きたいと思います」と語る。今回がタカタ初走行だった竹村吏駒(左)は、「タイヤが場所によっては凄くグリップしてくれたので、そういう所ではアクセルを踏めて楽しかったです」とタカタのコースを満喫していた。©BライWeb

 AT1クラスは昨年、フィットでチャンピオンを獲得した田口和久が欠場。昨年のシリーズ3位、大谷美紀夫ヴィッツと、フィットでダブルエントリーした良本海、松田耕平によるバトルとなったが、良本が両ヒートともベストタイムを叩き出して優勝となった。

2WDのAT車対象のAT1クラスは良本海が優勝。©BライWeb
AT1クラス表彰。(左から)2位松田耕平、1位良本海、3位大谷美紀夫。©BライWeb

 ZC32Sスイフトスポーツの事実上のワンメイクとなっているPN1+クラスは5台が出走。昨年、3勝をあげてチャンピオンを獲得した水野喜文が今回の開幕戦でも、両ヒートとも頭一つ抜け出したタイムを叩き出して快勝を飾った。

5台のZC32SスイフトスポーツによるバトルとなったPN1+クラスは、2023王者、水野喜文が快勝。©BライWeb
PN1+クラス表彰。(左から) 2位平安龍司、1位水野喜文、3位山口博文。©BライWeb

 S1クラスは藤崎清が第1ヒートで後続を2秒以上も引き離す好タイムをマークするが、第2ヒートに入ると、荒巻健太が2分9秒台まで一気に暫定ベストを吊り上げる。ラストゼッケンの藤崎も再逆転を狙って攻めの走りを見せるも2分10秒の壁は破れず、2番手。昨年はシリーズ4位に終わった荒巻が、チャンピオン奪取に向けて好スタートを切った。なおこのクラスは3位に永田誠が入り、ZC33Sスイフトスポーツが表彰台を独占する結果となっている。

大逆転でS1クラスを制した荒牧健太。©BライWeb
S1クラス表彰。(左から) 2位藤崎清、1位荒牧健太、3位永田誠。©BライWeb

 S2クラスはまだ学生ながら、昨年、チャンピオンを獲得した岡本泰成が第1ヒート、順調にトップタイムを叩き出して折り返すが、第2ヒート、マシントラブルが発生してスタートが叶わずノータイムに終わってしまう。このヒートで岡本の暫定ベストを2秒近く更新した岸山信之が、同じくGRヤリスを駆る井上博保とのバトルを制して開幕戦を制した。

全日本の第一人者の貫録を見せて優勝のS2クラス岸山信之。©BライWeb
S2クラス表彰。(左から) 2位井上博保、1位岸山信之、3位岡本泰成。©BライWeb

 Cクラスは、昨年、全勝でこのクラスを制した全日本ドライバー、岩下幸広が今回は不参加。そうなるとシリーズ2位だった濱田隆行ランサーが、やはりダントツの優勝候補の名にふさわしいスピードを見せて、両ヒートとも後続に大差をつけて快勝となった。

ライバルを寄せ付けない圧巻の走りで優勝のCクラス濱田隆行。©BライWeb
Cクラス表彰。(左から) 2位嶋村健児、1位濱田隆行、3位上原吉就。©BライWeb

 昨年も大接戦のタイトルレースが展開されたDクラスは、その激戦を制した王者、五味直樹が第1ヒートをベストで折り返すが、第2ヒートに入るとライバルの江川博、橋本和信が五味のタイムを次々と更新する。しかし最終走者の五味はただ一人、1分55秒台のタイムを叩き出してゴール。橋本に0.23秒競り勝って、今年も混戦が予想される激戦区の初戦をまずは制した。

Dクラス2023チャンプの五味直樹は、両ヒートともベストでまずは開幕戦を制した。©BライWeb
Dクラス表彰。(左から) 2位橋本和信、1位五味直樹、3位江川博。©BライWeb

 九州大学自動車部に属する学生ドライバー3名による戦いとなったCLクラスは、石原昌悟 が彌吉啓一郎とのミラージュバトルを制して優勝を果たした。

CLクラスは石原昌悟が九大自動車部の同門対決を制した。©BライWeb
CLクラス表彰。(左から) 2位彌吉啓一郎、1位石原昌悟、3位竹村吏駒。©BライWeb

フォト&レポート/BライWeb