JAF四国ダートトライアル選手権は、香川県さぬき市にある香川スポーツランドを舞台に行われるシリーズだ。香川スポーツランドは、現在、四国地区では唯一のダートトライアルコースで、同じ敷地内にモトクロスのコースを持つダートサーキットとしても知られている。香川スポーツランドはダートラの基本テクニックが試されるパイロンセクションと長い直線、そしてタイトでテクニカルなコーナーが続く林道セクションで構成されたコースだ。
今年の四国地区戦は3月10日に開幕戦が行われ、8月11日に最終戦が行われる全5戦のシリーズになる。第1戦から第4戦までは香川で行われるが、今年についてはコロナ禍前の2018年以来、6年ぶりに最終戦のみ広島のテクニックステージタカタで開催されることになった。
過去、タカタでの四国地区戦は、JMRC中国ジュニアダートトライアルシリーズと併催されることが多かったが、今年は昨年からタカタを舞台にシリーズが組まれているJAF九州ダートトライアル選手権との同日開催となる見込みだ。四国のドライバー達にとっては、全国屈指の高速コースであるタカタでの一戦も、またアドレナリンが上がりまくる一戦となる。
四国地区戦に設定されているのは4クラスで、比較的ノーマルに近い車両を主たる対象としたPN+クラスとNクラスのほか、改造車を主な対象としたSD1クラス、SD2クラスが設定されている。また四国地区戦には、JMRC四国ダートトライアルシリーズがダブルタイトルとして懸けられており、JMRCシリーズではG-1クラスとG-2クラスの2クラスが設定されている。
G-1クラスは地区戦のクラスを跨いで4WD車両の総合トップを、またG-2クラスは同様に2WD車両の総合トップを競うクラスとなる(ただし1,600cc以下の4WD車両はG2クラスに組み込まれる)。JAF地区戦とJMRCシリーズは他地区でもダブルタイトルとして行われているが、同じクラス分けのもとでふたつのタイトルが懸かるのがほとんど。四国のようにまったく違うクラス分けになるのは稀だが、2WD、4WDそれぞれ最速の座を賭けて走れるというのは、選手にとっては大きなモチベーションになっているようだ。
今年の四国地区戦での新たな動きが、レンタル車両の導入だ。ダートトライアルを一度、体験してみたいという希望者にホンダ・フィットのダートラ仕様車をレンタルするというもので、5,000円で四国地区戦に参加できる仕組みになっている。
「希望者が複数の場合はダブルエントリーで走ってもらえるので、ともかく一人でも多くの人にダートラを体験してほしい」と話すのは、自身もドライバーとして参加中のJMRC四国ダートトライアル部会の萩原豪部会長だ。「他の地区は大学の自動車部に所属する若い子達が自動車部の車両で一緒に出るケースもあるようですが、四国はそうした規模を持つ自動車部もないようなので、特に若い人達に、このレンタル制度を活用してほしい」と利用を呼び掛けている。
また他地区と同様に、AT車でエントリーするドライバーが出てきたのも新たな動きになっている。昨年からデミオのCVT車でPN+クラスにエントリーしているその一人、石井雅行は、「中国地区でもCVTのデミオが活躍しているので情報交換をしながら作りました。今はセッティングとドライビングをデミオに合わせ込んでいるところです」と話す。萩原ダートラ部会長も、「四国でも彼らがAT車の先駆者になってもらえればと思ってます。いずれは四国でもAT車限定のクラスを作りたい」と期待を寄せている。
4月に行われたシリーズ第2戦。まずPN+クラスには、ラリードライバーが本職の松原久がスポット参戦してきた。全日本ラリーでも優勝経験を持つこの大ベテランの走りに注目が集まったが、第1ヒートでは、近畿からこのシリーズに参戦している西岡章夫のスイフトが、松原デミオと同じ2分23秒台にタイムを入れて2番手に入り、松原に食らいついた。
第2ヒートに入ると路面がややラフになった影響か、各ドライバーともタイムダウンか、タイムアップしてもコンマ数秒という苦しい展開になり、松原の暫定ベストタイムは破られない。逆転を期した西岡もタイムダウンに終わってしまったため、ウィニングランとなった松原はラリードライバーらしく、コンディションの変わった路面に合わせたドライビングを見せてコンマ2秒ながらタイムアップに成功。西岡との差を0.8秒に広げて優勝を果たした。
続く決勝クラスとなったSD1クラスは、体調不良のため開幕戦を欠場したダートラ部会長、萩原のスイフトが、昨年のこのクラスのチャンピオン、谷芳紀を1.1秒差で抑えて第1ヒートのベストタイムを奪う。谷が駆るのは、現在では稀少車とも言える三菱ミラージュ・アスティ。しかし昨年も谷はこの旧車で、現行のスイフトスポーツを駆る萩原を抑えてチャンピオンの座に就いた。
注目の2本目。果敢に攻めた萩原だったが、約1秒のタイムダウンに終わってしまう。逆転のチャンス到来となった最終ゼッケンの谷だったが、こちらも0.5秒のタイムダウンに。結果、第1ヒートのタイムで萩原が逃げ切りに成功。敗れた谷は、「今年になってアスティの仕様を変えたのに、去年と同じ走り方をしてしまった。次は必ず2024年仕様に合わせた走りをしてみせます」とリベンジを誓っていた。
Nクラスは、新旧のランサーエボリューションによるバトルとなった。第1ヒートのベストは、このクラスの第一人者である橋本充弘。この2年ほどはスポット参戦に留めていたが、今年はフルにシリーズを追う予定だ。ただ一人、2分10秒の壁を破って貫録を見せる。元全日本ラリードライバーで、近年はダートラ、ジムカーナにも参戦とマルチドライバーとして活躍する大ベテラン、竹下俊博が約1秒差で続いた。
勝負のかかった第2ヒート。持ち前のアグレッシブな走りでタイムアップを狙った橋本だったが、「スタート直後はタイムを上げられると思ったけど、林道区間の路面が微妙だったので、どうかな?という感じだった。走りもちょっと気合いを入れ過ぎて空回りしてしまった」とまさかの2.5秒のタイムダウン。一方、竹下は橋本の2本目のタイムは上回ったが、1本目の自らのタイムは更新できなかったため、逆転は果たせず。このクラスも、橋本が第1ヒートのタイムで逃げ切った。
SD2クラスは、“もう一人の谷”こと谷正史のランサーが第1ヒートのベストタイムを奪取する。谷正史は昨年まではインテグラに乗り、SCD1クラスの谷芳紀と2WD最速の座を巡ってバトルを展開してきたが、最終戦でランサーにスイッチ。今年はSD2クラスを追い、新たなクラスのチャンピオンと、4WD最速の称号であるG-1クラスチャンピオンの2冠を狙う。
このクラスも第2ヒートはタイムダウン傾向となり、第1ヒートで谷に2秒差の2番手につけていた豊田薫もタイムダウン。最終ゼッケンの谷も、「ギャップで飛ばされてしまった」とこちらもタイムアップは果たせず、第1ヒートのタイムで優勝となった。「1本目がそんなに良くなったので走りを変えたのが裏目に出てしまった」と谷。「1本目と同じ走りをしていたら、タイムを上げられたかもしれない」と、第2ヒートの路面も挽回の可能性を残していたと振り返った。
注目のJMRC四国シリーズは、まずG-2クラスはSD1クラス優勝の萩原が1位となり、ミラージュ・アスティの谷芳紀が2位、PN+クラス優勝の松原が3位という結果に。そしてG-1クラスでは谷正史が0.055秒という僅差で、Nクラス優勝の橋本を下し、0.38秒差で敗れた開幕戦のリベンジを果たす結果となった。
フォト&レポート/BライWeb