プレイバック2025全日本ダートトライアル①SP切谷内/若者たちの夏。タイトルレース生き残りを賭けた白熱バトルの結末は!?

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 経験がものを言う全日本ダートトライアル選手権にあって、2025年は20代の若手ドライバー達がシリーズ前半戦で速さを見せつけ、注目を集めた。

 PN1クラスでは、ディフェンディングチャンピオンの関東のベテラン、飯島千尋が開幕2連勝を飾って連覇に向け順調なスタートを切ったが、飯島の地元とも言える栃木の丸和オートランド那須で開催された第3戦では、広島在住の25歳、南優希が0.045秒差で飯島を抑え切って全日本初優勝を飾った。

 南は福島エビスサーキットスライドパークで開催の第5戦でも、再び飯島に僅差で競り勝って2勝目を獲得。勝ち星で飯島に並び、ポイントも8点差まで詰めてシリーズランキング2位に浮上。残り3戦での逆転タイトルに望みを繋げた。

 第6戦の舞台は青森のサーキットパーク切谷内。南にとっては3回目の切谷内チャレンジとなるが、前年は7位に終わっている。「飛び込んでいけるコーナーが多くて楽しいので、自分は好きなコースです」と南。「今年は(チャンピオンを)獲りたいというか、獲らなければいけないと敢えて自分にプレッシャーをかけている。全日本フル参戦2年めということでタイヤの使い方、走り方、セッティング等がマッチしてきた感じがあるので、去年に比べても走りをまとめられている」

始めてフル参戦した2024年は2度、表彰台を獲得しランキング5位につけた南。第3戦丸和で待望の初優勝を果たした。©BライWeb

「できれば、ここと次戦のいなべモータースポーツランド(三重)を勝ち切って一気に決着させたい。最終戦のテクニックステージタカタ(広島)は地元だけど、飯島さんも走り込んでいるコースなので、絶対来るはず。ベテランの強みもあるし、かなり自分の方がプレッシャーかかると思うので、タカタまで引っ張りたくない。ここはだいぶ研究してきて、昨日の公開練習でも、“こう走ればいいんじゃないか”というのが当たった感じがあるので、後は今日の2本目の砂の掃けた路面をどこまで読み切るか、の勝負になると思います」

 注目の決勝第1ヒート。ベストを奪ったのは地元青森の切谷内スペシャリスト、工藤清美で南は1.5秒近く離され6番手。しかし飯島も9番手と出遅れてしまう。勝負のかかった第2ヒート。南は3.3秒のタイムアップを遂げて1分37秒台に叩き入れて首位に躍り出る。だが後走の工藤がすかさず0.32秒、逆転してトップを奪い返す。最終ゼッケンの飯島は3秒近いタイムアップを遂げるも順位を落として9位でゴールとなり、今シーズン2度目の表彰台落ちを喫することとなった。

「2本目は行けるか行けないかというギリギリの走りはできたので、全力は出し切った。やり切った上での2位だから、まぁ良しとしたい。残り2戦も、ともかくやるしかないですね」と振り返った南だが、スイフトでの全日本挑戦は今季が最後となる。2026年からはロードスターでクラスを変えて戦う予定だ。ジムカーナでは主力マシンのロードスターだが、ダートラでは、というかグラベルの競技にロードスターを持ち込むドライバーはほぼ、例がない。新たな挑戦のためにも、王冠奪取でスイフトのラストシーズンを締め括りたい南の戦いは続く。

第1ヒートの6位から2位まで順位を上げて、今季4度目の表彰台を獲得した。©BライWeb

 全日本の経験に長けた猛者が揃うSA1クラスで一人気を吐く若手が、学生ドライバーの渡邉知成、23歳だ。2024年夏、地元の丸和で開催された一戦でいきなり2位に入り、注目を集めた渡邉は、2025年のシリーズを追うことを決め,第2戦タカタで早くも全日本初優勝を飾り、タイトルレースに名乗りを上げた。

 勢いに乗った渡邉は続く第3戦丸和でも2位を獲得。第5戦エビスでも再び2位を獲得して、シリーズランキング2位で切谷内に乗り込んできた。シリーズ終盤の3戦は、ここまで2勝をあげている前年の王者、河石潤と、同じくチャンピオン経験者である葛西キャサリン伸彦との三つ巴が必至の情勢だ。

「丸和もエビスもあと一歩のところで勝利に届かなかったので、凄く歯痒かった。特に丸和は盛大なミスを2回もやって(笑)、0.3秒差で負けてるんで、ホントにもったいないことをしました」と渡邉。初優勝をさらった後もどうやら勝つ気マンマンだったようだ。

国内でも屈指の高速コース、タカタで初優勝を飾った渡邉。全日本デビュー4戦目での快挙だった。©BライWeb

 当然、今回の切谷内も2勝目を狙うが、土曜の公開練習ではタイムが伸びなかった。ただし本人は、「ほとんどの人がウェットタイヤで走った中で、敢えてドライタイヤで走った自分がトップから1秒以内で走れたのはむしろ良かった。明日はスーパードライタイヤの勝負になると思うので、今日の内にドライタイヤの感触を確かめておきたかったんですよ」とポジティブシンキングだ。

「ここで2位か3位に入らないと、この後のシリーズが厳しくなるので、そこが最低限の目標。次戦のいなべも同様に2位か3位につければ、最終戦のタカタは絶対勝つので、チャンピオンは獲れるはず」。それが渡邉のタイトルへの皮算用だ。そして結果から言えば、渡邉の勢いは切谷内でも止まらなかった。

 第1ヒートは、「ウェットタイヤが路面に負けてアンダーステアを出してしまった」と言いながらもトップから0.2秒落ちのセカンドベスト。第2ヒートでは、前日予言した通り、スーパードライタイヤで挑んだ渡邉は、ただ一人、1分33秒台に入れて首位を奪還、ライバル達を振り切った。「スタートして最初のコーナーで2本目の路面のグリップを掴めた感じがあったので、ギャラリーコーナーは死ぬ気で踏んでいった。ミスるとすれば前半区間だと思ってたけど、そこを乗り切れたので最後まで頑張れた。ゴールした時に、“これは行けた!”と思いました」

 大学の自動車部に所属していたので、そこそこの実走経験を誇る渡邉だが、ベースにあるのはシュミレーションゲームの経験だ。リアルなドライブ経験ができると評判の高い「DiRT RALLY 2.0」をバーチャルの世界で散々走り込んできたので、「高速コーナーでクルマが滑っても、ゲームで対処してきたので全然怖くない」と言い切る。度胸だけではないテクニックが23歳の若者の躍進を後押ししているようだ。

第1ヒートの僅差のバトルから一人抜け出して、2勝目をマーク。シリーズランキングもトップに立った。©BライWeb

 PN2クラスもSA1クラス同様、ここまで三つ巴のタイトルレースが展開されてきた。ランキングトップに立つのは北海道の28歳、張間健太で、前年のチャンプ、佐藤卓也が6ポイント差の2位につけ、前戦エビスでクラス初優勝を果たした29歳、奈良勇希が15ポイント差で追う。

 第3戦を欠場したにも関わらず、優勝2回、2位、3位が各1回と出場した全戦で表彰台をゲットしている張間は、「別にチャンピオンを意識してきたわけではなくて、一戦一戦着実にという感じで戦ってきたら、結果的にポイントリーダーになっちゃったって感じです。去年、初めてフルに全日本追って、走り方とか組み立て方が分かってきたのが、ここまでの2勝に繋がった。“自分なら、こう走りたい”という理想とする走り方が、今年はできている」

 佐藤と同じ名門のオクヤマチームに所属していることも急成長を加速させている。「卓也さん始め、チームとして全日本を戦っていく上でのノウハウが豊富にある。走り方やセッティングを決めていく時にも選択肢が広いので、かなり助けてもらってます。でも今回もいつもと同じ調子で走ります。クラスの先輩達の間になるべく上位の成績で入らせてもらえれば」と謙虚な姿勢は崩さない。

2023年はスポット参戦した2戦でともに表彰台獲得と、隠れた実力派として知られた張間。今季はその才能が開花した一年となった。©BライWeb

 一方の奈良は、前年はPN1クラスで飯島、工藤に続くランキング3位を確保しながら、今季は敢えて現行のスイフトスポーツにマシンを代えて、PN2クラスに移ってきた。「1年目からチャンピオンを狙うという気持ちで戦ってます」と初タイトルへのモチベーションは高い。

「正直、クルマが代わったことで走り方、セッティングなどまだ発展途上の部分もあるけど、乗り出した頃に比べたらだいぶ改善できている。前半戦はライバルのミスに助けられてポイントが取れた面もあったけど、徐々に調子は上がってきているので、いまは自分の力でポイントが獲れているという実感があります」

 その奈良は土曜の公開練習から絶好調でトップタイムをマーク。前戦エビスを大差で制して、“手の付けられない速さ”を見せつけられたライバル達は、大いに警戒することとなったが、翌日の決勝日も、奈良の独壇場となった。

 第1ヒートでは、地元青森在住でこのコースを知り尽くす佐藤を1秒以上も引き離す圧巻のベストタイムをマーク。第2ヒートでも再び佐藤を0.7秒差の2位に下して快勝したのだ。「中間タイムでぶっちぎって後走の卓也さんにプレッシャーをかけたかったので、特に前半区間は頑張った。それくらいで行かないと勝てないと思ったので。その勢いをゴールまで持って行けたのが勝因ですね」と奈良。「後で振り返ったら、今日がピークだったなんてことにならないように(笑)、残り2戦もしっかり走りたい」と次戦を見据えた。

両ヒートともベストタイムをマークしての快勝。ストップ・ザ・奈良がライパル達の合言葉となりそうだ。©BライWeb
優勝が決まった瞬間、雄叫びを上げる奈良。前戦エビスの優勝が決してフロックでなかったことを証明した。©BライWeb

 奈良に1秒以上も離されて3位に終わった張間は、「100%近い走りができたのに負けたのだから、今日は奈良君が速かったというしかない。ゾーンに入った時の奈良君の集中力は凄い。僕はゾーンに入る練習が奈良君より、まだ足りてないですね」と今回ばかりは素直に脱帽した。

第1ヒートは2番手につけたが、先輩の佐藤に抜かれて3位。今季3勝目は果たせなかった。©BライWeb
チャンピオンを争うトップ3が表彰台に並ぶことに。三つ巴の決着は最終戦に持ち込まれることが必至となった。©BライWeb

「ただ今日のような調子があまり良くない時でも、3位に入って表彰台を獲れたことは悪くないと思っている。これで3台の争いがますます団子状態になってしまった。見てる方は楽しいでしょうけど、やってる方はかなり厳しい戦いになりそうです」と張間は最後に笑ったが、そこに気負いは感じられなかった。若者らしからぬ冷静な態度を貫けることが、この男の最大の武器なのだ。次の第7戦は9月下旬。真夏決戦の熱い余韻を持ち帰った若者たちの戦いは、2か月後に再開する。

ホームコースは譲らず。PN1クラスは工藤清美が今季初優勝を飾った。©BライWeb
PN3クラスは徳山優斗とマッチレースを展開している竹本幸広が、徳山に並ぶ今季2勝目をマーク。©BライWeb
Nクラスはディフェンディングチャンプの細木智矢が、第1ヒートの8番手から大逆転で優勝。©BライWeb
SA2クラスは、浜孝佳が第2ヒートでただ一人、1分27秒台に叩き入れて優勝を飾った。©BライWeb
タイトル奪回を期す浜。最大のライバルで前年の覇者、岡本泰成を2戦続けて下して3勝目一番乗りを果たす。©BライWeb
SCクラスは第1ヒートは4番手につけていた目黒亮が、0.064秒という超僅差でライバル上村智也をかわして逆転優勝。©BライWeb
開幕2戦こそ上村に連勝を許すも、第3戦から3連勝を飾った目黒。今回も誰もその勢いを止めることはできなかった。©BライWeb
D1クラスは今季話題のマシン、スバルのBOXERエンジン搭載のMR-Sを駆るパッション崎山が第4戦に続く2勝目をマーク。©BライWeb
スーパーマシンがひしめくD2クラスは今回もバトルが白熱。田口勝彦が逆転勝ちを収めた。©BライWeb
今回、4勝目をマークした田口が2戦を残して3年連続となるシリーズチャンピオンを確定させた。©BライWeb

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