2025年の全日本ダートラの盛り上がりに一役買っているのが、新設されたD1クラスのマシン達だ。これは長年に渡ってスーパーマシンが集い、改造車の最高峰クラスとして位置づけられてきたD車両のクラスを、2WD/4WD別に分けたことによるもので、D1は2WD車が出場できるクラスになる。
昨年まで、2WD改造車のナンバーワンを競ってきたSC1クラスのドライバー達の多くがD1クラスに移行したが、SC車両よりも大幅に改造の自由が効くとあって、各車パワーアップはもちろん、FF化したBRZや、スバルエンジンを積むMR-Sといった“魔改造”マシンも新たに登場し、このクラスを一層賑やかなものにしている。
そんな中、三重のいなべモータースポーツランドで開催された第7戦では、この日が全日本デビューだった一台のトヨタ・スターレットが、あわや優勝をさらうかという走りを見せて会場をどよめかせた。
もう若い人には聞き慣れない名前かもしれないが、スターレットはヤリス、ヴィッツに連なるトヨタのコンバクトカーの代表モデル。今回登場したEP82型スターレットは1989年にデビューしたモデルで、ダートトライアルの世界でも多くのユーザーを獲得した、いまや伝説のホットハッチとして知られている。
後継のヴィッツ、ヤリスが出た後もスターレットを乗り継ぐドライバーは少なくなく、その素性の良さゆえ、地方選手権等ではそれなりの戦闘力を誇ったが、流石にデビュー後30年を超えるとあって全日本ではほぼ姿を消し、絶滅車種に近い一台と見られていた。それがたった一台ではあるが、この日突如として復活したのだ。
今回、この車両でダブルエントリーしたのは、EP82が世に出てから生まれた多門寛晃(34歳)と伊東拓海(27歳)の二人で、ともに千葉工業大学自動車部のOBだ。自動車部の部車だったEP82の魅力に取り憑かれて以来、究極のEP82を作り上げて競技を戦うことにこだわり続けてきた。
「EP82って当時は大抵、お金のない自動車部が乗る車両で(笑)、お金のある自動車部はもうEK9シビックやDC2インテグラをさらに排気量アップして学生の大会に出ていたので、勝てないのは当たり前だったんですけど、それでもEP82で勝てないはずはないと信じてやっていました」と多門。同じように最後までEP82で大会に出続けた東京農業大学自動車部のOB達と結成した「82の会」で、いまもその信念は生き続けているという。
今回持ち込んだEP82は2年前に新調したモデルで、エンジンはEP82が搭載する4E型の流れを汲む5E型に乗せ換えて1,500ccに排気量アップ。さらにターボ化して何とその出力は230~240psを誇る。足回りも当然、競技用パーツを装着するが、サスペンションの形状はノーマルのままだ。
ボディはモータースポーツ競技で活躍した3ドアモデルではなく、5ドアのソレイユグレードのボティを使用。これは車両重量が3kg軽いことを重視したもので、その甲斐もあり、車重は750kgを切るという超軽量を達成。GT-R並みのパワーウエイトレシオを誇っている。
実はこの車重がキモで、 SC車両の場合は最低重量の規定があり、約200kgのウエイトを積まなければならないため、「そうなるとEP82の良さが生かせない」(多門)ということで、これまで参戦を見送ってきた経緯がある。
それが中部地区戦に現行の状態で参戦して、かつ勝負できるクラスがあると聞いたため、今季になって関東から遠征を開始。伊東が2勝するなどの実績が認められて、晴れて今回の全日本デビューに至ったというわけだ。「D1クラスができたことは、僕たちにとっては、まさに“渡りに舟”でした。学生時代のリベンジがようやくできる(笑)」と二人は口を揃える。
注目のデビュー戦は伊東が奮闘して、第1ヒートで2番手タイムをマーク。第2ヒートでは1台にかわされ3位で終えたが、後半区間ではトップタイムをマークするなど十分すぎるほどの“爪痕”を残した。多門も6位に入りダブルで入賞を果たした。



「今日の下りはギャップ拾いまくってクルマが暴れっ放しでしたが、EP82のセールスポイントの軽さをタイムに繋げられたと思います。EP82ってリアの動きが不安定なんで敬遠する人もいるんですが、それを分かった上で運転すれば自在に動かせるクルマでもある。誰よりもブレーキを遅らせることもできるし、気合入れた分だけ、速く走れるクルマです(笑)」と伊東はEP82のポテンシャルを存分に発揮できたことに笑顔を見せた。
「自分達の中では魔改造をやっているという意識はないんです。今までただクルマを軽くしてきただけって感覚なんですよ」と多門は最後に笑って、これまでの道のりを振り返った。あくまで愛するEP82スターレットというクルマの良さを速さに繋げることだけを信念としてやってきたので、その一線を越えてしまっては、“魔改造”になってしまう。そんな想いが彼らにはあるのかもしれない。
今後はエンジンのパワーアップに対応した冷却系の改善や、パワーを生かしきるためのタイヤのサイズアップなど、まだ“玉”は残されているという。実はさらなる軽量化も可能らしい。「全日本という場所で、このクルマでどこまでやっていけるのか。自分達が納得できるところまではやりたいと思います」と多門。唯一無二の改造車の戦いに、今後も注目していきたいところだ。















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